1990年代から始まるデジタルカメラの出現は、カメラ付き携帯電話の登場とともに、写真の世界にパラダイムシフトを起こした。本展では約30人の出品者が「初めてのデジカメ」というテーマで、過去に撮影した写真を発掘し、出品する。初めてデジタルに遭遇した時の驚きや動揺、パーソナルな瞬間を切り取ったデジタル画像をNFT化して販売するという試みとなっている。
販売方法は、2021年に藤幡正樹氏が「Brave New Commons」として実施した「参加者の総数で購入価格が下がるシステム」を発展的に導入している。この時には、初期設定で100万円の作品価格をつけた1980年代のマッキントッシュの画像データに、912人の参加者が集まり、最終的な購入価格が1,096円まで下がった。この度実施する「My First Digital Data」では、日本円に代わって仮想通貨「イーサ(ETH)」での販売が実施される。
販売は「3331 ART FAIR 2022」(会期:2022年10月28日(金)プレビュー/29日( 土)・30日(日) 一般会期)とWebサイトで同時にスタートし、2023年4月30日(日)まで継続実施。販売終了後、初期設定価格を購入者数で割り算したものが、最終購入価格となる。
昨今の価格の高騰や現代美術との接続によって話題を集める「NFTアート」のムーブメントとは一線を画す、藤幡正樹氏による独創的なプロジェクトとなっている。
<開催概要>
「My First Digital Data はじめてのデジタル」展
□会 期:2022年10月29日(土)12:00-20:00 ・ 30日(日)12:00-18:30
※入場受付は開場30分前より/最終入場は閉場30分前まで
※10月28日(金)15:00-20:00は招待者限定のプレビュー
□会 場:3331 Arts Chiyoda 1F 3331 Gallery
□主 催:「My First Digital Data」事務局、3331 Arts Chiyoda
□入場料:「3331 ART FAIR 2022」入場チケットが必要
一般 2,500 円/シニア(65歳以上)2,000 円/学生(大学生・専門学生)1,000円/前売り(一般のみ)2,000円
□Webサイト:
「My First Digital Data」http://mf22.3331.jp/※10月25日公開、購入は10月28日から
「3331 ART FAIR 2022」 https://artfair.3331.jp/
■ 本プロジェクト「My First Digital Data」について
:以下、藤幡正樹氏のコメント
「初めて撮ったデジタル写真」という問いは、すでに遠い銀河の向こうにかき消えてしまった。あの「アナログ/デジタル論争」はどこへ行ってしまったのか、、。僕たちはどうやってアナログからデジタルへ 移行したのか、その軌跡を辿り、メディアの変遷を追跡してみること、それがこの展示の趣旨である。そこにあるのは技術の進化ではなく、僕たちの経験である。
デジカメの変遷はセンサーとメモリーの改良の歴史だ。センサーは80年代にビデオ用途で先行していたが、最初の波は90年代中途に起こる。次々と新製品が発売になり猛烈な市場獲得争いに入ることになる。その後、2000年に入ってから「写メール」が爆発的に流行、さらにスマートフォンが市場に投入されると、2015年頃にはデジカメの役割が終わる。およそ20年間の激動であった。
デジカメの出現が視覚芸術史に及ぼした影響がいまだ計測されきっていない現在、この展覧会はその価値の転換開始地点として、いずれ見出されることになるだろう。今ここで起こっていることは、もう後戻りできない歴史的事件である。
※331 ART FAIR 2021 特別企画展『符号理論/Cording Theory』 2021年10月28日-31日開催の一部として展示された。その後、2022年9月には、オーストリアのリンツで開催されたアルス・エレクトロニカにて、大きく評価され入賞(Honorary Mention)を果たす。 https://mf.3331.jp/
藤幡正樹氏(本展キュレーション)
メディア・アーティスト。80年代はコンピュータ・グラフィックス、90年代はインタラクティブアートやネットワークをテーマにした作品を制作、その後GPSを使ったフィールドワーク・シリーズを展開。現在はARによるBeHereプロジェクトを継続中。1996年アルス・エレクトロニカ(リンツ、オーストリア)で日本人初のゴールデン・ニカ受賞。1989年から2015年まで、慶應義塾大学、東京藝術大学で教鞭を執る。現在、UCLA客員教授。
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出品作家
伊藤穰一、エキソニモ、沖啓介、桂英史、久保田晃弘、小池一子、佐藤卓、高嶺格、高山明、 タナカカツキ、谷田一郎、都築響一、寺田克也、ときたま、中村政人、永原康史、萩原朔美、八谷和彦、藤幡正樹、古川日出男、松井茂、松本弦人、山本謙治
他、総勢30名を予定
購入の流れ
◉作品は、仮想通貨「イーサ(ETH)」にて販売。
◉購入にあたっては、プロジェクト・ウェブサイト(https://mf22.3331.jp/)において、MetaMask等の仮想通貨ウォレットとの接続が必要てとなる。実際の購入では、作品価格+ガス代が引き落とされることになる。
◉本NFTの販売は「申込人数が増えると、購入価格が下がる」という「サブディビジョン」方式で販売、購入者が増えれば増えるほど、一人あたりの購入価格は下がっていく。
◉販売は「3331 ART FAIR 2022」会場とWebサイトと同時にスタートし 、2023年4月30日(日)まで継続。
◉最終購入価格は販売終了後に決定される。2023年5月以降、購入時の支払い金額との差額は、プロジェクト・ウェブサイトから「クレーム」することで、各自のウォレットに取り戻すことができる。この時にもガス代がかかるとのこと。