東京大学 生産技術研究所 インタースペース研究センター豊田研究室は、5月1日より施井 泰平氏(スタートバーン株式会社 代表取締役)をリサーチフェローに迎え、これまで目指してきた「ゲームAI/ゲームエンジン」、「BIM」、「ブロックチェーン/NFT」の3つの核をベースとした「3領域連携」の研究体制が整えたことを発表した。今後、様々な分野での活用が期待できるため、学内外に幅広く連携を募っていく。
4月1日より三宅 陽一郎氏(株式会社スクウェア・エニックス AI部ジェネラルマネージャー、リードAIリサーチャー)、石澤 宰氏(株式会社竹中工務店 設計本部アドバンストデザイン部コンピュテーショナルデザイングループ長)がリサーチフェローに着任していたが、ブロックチェーン並びにNFTを活用した事業を幅広く手掛け、国内でも有数の知見を有する施井 泰平氏がリサーチフェローに加わることで、センターの特色である「ゲームAI/ゲームエンジン、BIM、ブロックチェーン/NFT」の「3領域連携」が実現した。
以下、インタースペース研究センターからのコメント:
■インタースペース研究センターの掲げる「3領域連携」とは
これまでは静的なデータ体系として扱われてきたBIMですが、ゲームエンジンという動的なデータ体系を通して、竣工後の活用可能性に接続されることで、コモングラウンドの社会実装を促進するものになります。また、BIMという建設業界に閉じた高度なデータアセットをNFTおよびブロックチェーン技術を通じ、より広範な社会インフラでのデータ流通へ可能性を拡張することを目指します。さらに、ゲームやVR空間内でのデータセットがブロックチェーンおよびNFTと接続することで、デジタル拡張領域での新たな市場開拓の可能性を模索することにもつながります。
インタースペース研究センターは、これまでデジタルツイン化がもたらす福利を最大化すべく、サイバー空間とフィジカル空間の境界領域(インタースペース)に両空間の高度な連携の基盤を設計し、その体系化と社会への実装を目指して研究を進めてまいりました。
今回、各領域にリサーチフェローを招聘することで「ゲームAI」「BIM」「NFT/ ブロックチェーン」の「3領域連携」を実現する研究体制を強固なものとし、これらの連携のための体系化や事業化に必要な基礎技術開発、あるいはより広域の社会的な体系化や価値化をリードする研究体制が整ったものと考えております。
BIM/GIS分野では、社会実装が先行する、セマンティクス記述に特化したデジタルアーキテクチャ(都市OS等)に対し、実空間のデジタル記述に特化した先行実装領域(建設、土木由来の静的体系)としての研究意義があります。GIS、BIM、点群、ボクセル、ゲームエンジンなどの領域と、位相幾何学的な解析空間、シミュレーションやデータアーカイブ化などの、産業領域ごとに異なる記述仕様を繋ぐ体系づくりと、その基準骨格としてのBIMおよびGISという位置づけを目指します。
ゲームAI/ゲームエンジン分野では、多様なエージェント視点で、可読かつ可変な環境をリアルタイムに記述することができるゲームエンジン・ゲームAIの特性を活かし、現実世界のデジタル記述とIoTプラットフォームとの連携により、ゲームエンジンの特性およびアーキテクチャが実空間で活用できる可能性を研究します。パス生成などを扱うスパーシャルAI、全体を制御するメタAI、あるいはキャラクターAIが、連携して行為空間を生成、制御することを、バーチャル空間において市販・通信ベースでの実装を目指します。
NFT/ブロックチェーン分野は、アイテムのみでなく、デジタル環境や行為などの記述を通した流通やNFT化などの価値化領域において特に重要視しています。あらゆるモノや行為がデジタル記述されることが標準化された世界での、データの流通と価値化の可能性を開拓することで、ゲームエンジンをもとにしたコモングラウンドの体系構築と実装に向けて、関連分野を横断する有識者とともに研究を進めていく基盤づくりを進めます。
■インタースペース研究センターにおける「3領域連携」を中心とした研究体制
インタースペース研究センターでは、「ゲームAI/ゲームエンジン」「BIM」「ブロックチェーン/NFT」の「3領域連携」研究基盤を中心の核に据えることでセンター内の連携を強化し、東京大学生産技術研究所内の各分野の研究室と協働し、研究を進めてまいります。
センターに参画する各研究室では、空間システム工学、GIS地理空間記述、都市環境数理工学、建設カーボンフットプリント、時空間メディア工学、IoTシステム、IoTネットワーク、コモングラウンドなど、デジタル空間記述の体系化に向けて欠かせない領域を網羅しており、基礎研究を行う最適な環境が構築されています。
これら3領域を相互補完し、連携する研究体制はこれまで例がなく、サイバー空間とフィジカル空間の境界領域(インタースペース)に両空間の高度な連携の基盤を設計し、その体系化と社会への実装を目指す本センターにとって、重要な基盤であり欠かせない研究体制であると確信しております。
次世代のデジタル空間記述の体系化、インタースペースの社会実装に加えた連携の価値創出を目指してまいりますので、ご関心をお寄せくださる研究機関、企業との連携を積極的に模索していきたいと考えています。